ハイデガー
ポスト形而上学の時代の時間論

(第2676回「日本図書館協会選定図書」

入谷秀一 著

四六判・上製
260頁・税込定価3360円(本体3200円)
ISBN978-4-87259-263-4  C3010 [2008]

 

アリストテレスの残響を揺曳し成立した『存在と時間』はニーチェとの対決により劇的に変容し、その時間論はヘルダーリンを介して再びアリストテレスと対峙する。
若き俊英による画期的・決定的なハイデガー論


三、四〇年代のハイデガーは時間の真相を、自己の同一性を前後へと揺さぶる「折り目」としてとらえた。そこは過去であり、また将来でもある「自ら先立つこと」が相互に転回し、ぶつかり、変容する現場である。しかしハイデガーはこの折り目をたとえば「傷」、異他的なものとの関わりによる自己の分裂、断片化の経験の地平として、倫理学的に語ることはない。それはむしろアドルノのモチーフだろう。折り目はハイデガーには近づきがたい深淵として、存在論的な「謎」に留まる。存在そのものが謎なのである。
(本書あとがきより)

 

 

【主要目次】

第1章 ハイデガーの時間論の起源と展開‐アリストテレスから出発して‐

第1節 アリストテレスとハイデガー
第2節 現存在の時間性と有限性
第3節 現在時制と完了時制の二重構造―初期ハイデガーのアリストテレス論
第4節 アリストテレス解釈から『存在と時間』へ
第5節 『存在と時間』をつらぬく完了/未完了の構造と「自由」の問題

第2章 有限性―『存在と時間』における死の遠近法
第1節 現存在分析論の主要テーゼ:「存在者的に最も近いものは存在論的には最も遠い」
第2節 死の実存論的分析とその概観
第3節 死の実存論的分析の前史―死はいかにして問題となるのか
第4節 分析の出発点―「近さ」と「遠さ」の両立不可能性
第5節 実存論的な遠近法の構成―日常性における「近さ」と「遠さ」の両立
第6節 現存在の非本来性における接近と回避の構図―「遠さ」に支えられた「近さ」
第7節 現存在の本来性の諸相―「近さ」に支えられた「遠さ」

第8節 実存論的な遠近法のダブル・バインドとその帰趨

(a)瞬視と恒常性―現存在の歴史的生起の二重構造
(b)現存在の歴史的生起の二重構造とアリストテレスの「今」の二重性
第9節 『存在と時間』以後の遠近法―「近さ」と「遠さ」の根本的な解釈にむけて

第3章 分裂する時間論の地平―ニーチェの接近と離反
第1節 有限性と無限性
第2節 『存在と時間』から『ニーチェ』へ―ニーチェ講義前史
第3節 ニーチェへの接近―「力への意志」の解釈とその周辺

第4節 接近と離反(a)

第5節 接近と離反(b)
第6節 制現前化―『ニーチェ』以後のニーチェ論
第7節 結語:テクスト解釈の地平の変容と分裂

第4章 差異の判断―ハイデガーのヘルダーリン論の時間論的解釈
第1節 ハイデガーの時間論をつらぬく解釈学的循環とその錯綜

A自らに先立つ―『存在と股間』とは別の仕方で
第2節 時間論としてのヘルダーリン論
第3節 『ヘルダーリンと詩作の本質』とその構成

第4節 講義「ヘルダーリンの賛歌≪ゲルマー二エン≫と≪ライン≫」

第5節 詩論『追想』
第6節 『追想』以後のヘルダーリン論とその問題
Bパラドックス

第7節 「自然」の時間性(a)−詩論『追想』以前

第8節 「自然」の時間性(b)−詩論『追想』以後
第9節 結語:ハイデガーのヘルダーリン論の帰趨

第5章 総括と展望:自らに先立つことの二重の意味

付論 ハイデガー対ニーチェ、あるいは彼らはヘルダーリンをどう読んだか