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日本古代国家の形成過程と対外交流
中久保辰夫 著
紙 版
国家形成期にあたる古墳時代の土器の特質,日韓交流の展開,古墳と集落にみる変化等から、渡来文化の受容が果たした歴史的役割を解明
出版年月 | 2017年03月24日 |
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ISBN | 978-4-87259-578-9 C3021 |
判型・頁数 | B5判・334ページ |
定価 | 本体6,400円(税込7,040円) |
在庫 | 在庫あり |
年間8000件近い日本国内の発掘調査と,2000年代以降急増した韓国内における発掘調査成果は,いま,従来の古代国家形成過程に更新を求めている.本書は,日本の国家形成期にあたる古墳時代を対象に,この時代の土器の特質,日韓交流の展開,韓半島から移住した渡来人の動向,そして古墳と集落にみる変化を基礎に,渡来文化の受容が果たした歴史的役割を解明しようとする考古学の専門書である.
序章 本書の目的と課題
1 本書の視座
2 本書における4つの論点
(1)古墳時代土器論
(2)古墳時代日韓交渉の展開
(3)韓半島系渡来人と日本列島在来の社会
(4)渡来人の果たした役割と古墳時代政権交替論
第1章 古墳時代土器にあらわれた時代の特質
1 古墳時代土器の構成
(1)はじめに
(2)古墳時代土器の構成 ― 土師器と須恵器、韓半島系土器―
(3)古墳時代における土器研究の流れ
(4)古墳時代における土器様相の変遷
2 外来の土器と在来の土器 ― 生産と消費にみる両者の差異―
(1)供膳器の変化と日本列島の独自性
(2)日韓煮炊器の比較
(3)韓半島系土器と在来土器の差異
3 土器にみる文化の融合 ― 韓半島系土器の受容と生活文化の変容―
(1)折衷土器の分析 ―定着型軟質土器―
(2)近畿地域煮炊器の変容 ―布留式甕製作技術にみる規範の弛緩―
(3)須恵器生産に組み込まれた煮炊器
4 小結 ―土器にあらわれた異文化融合―
第2章 3 ~ 5 世紀における日韓交流の展開
1 問題の所在
2 4 世紀における日韓交渉論の進展
(1)近年の研究動向
(2)研究史上にみられる問題点
3 対外交流の変化と「空白」の4 世紀
(1)土師器研究の現在と小型丸底土器
(2)小型丸底土器の分類と変遷
(3)3 ・4 世紀の交易網とその衰退
(4)「博多湾貿易」の衰退 ―福岡県西新町遺跡の衰退時期をめぐって―
(5)「空白」の4 世紀 ― 交易網の機能不全―
4 𤭯の創出と5世紀の日韓交渉
(1)広口小壺、𤭯の系譜をめぐる論争
(2)型式分類とその変遷
(3)金官加耶と倭 ―広口小壺の変化と小型丸底土器―
(4)百済・全羅道地域と倭 ―𤭯と有孔広口小壺の系譜と共有現象―
(5)全羅道地域出土須恵器の出現背景
5 小結 ― 日韓交渉の展開とその背景―
第3 章 韓半島系渡来系集団と倭人社会
1 韓半島系渡来人の居住地
(1)近畿地域各地における韓式系軟質土器の分布
(2)韓半島系土器分布にあらわれた集落差
2 韓式系軟質土器の受容にみる集団関係
(1)機能および調理内容に関する検討
(2)土器製作技術の検討
(3)渡来系集団集住地としての河内湖周辺
3 陶邑における韓式系軟質土器の変容過程
(1)サイズの分析
(2)土器製作技術の規範
(3)陶邑・大庭寺遺跡にみられる特異性
4 須恵器受容にみる渡来文化受容と在来社会
(1)研究史の整理
(2)新たな食器文化とその中心地
(3)須恵器・二重口縁壺の製作背景
5 小結 ―渡来系集団の定着と在来集団―
第4 章古墳時代中央政権の質的変化と生産組織
1 手工業生産遺跡をめぐる近年の研究動向
(1)地域開発にみる地域差と渡来人
(2)新資料の増加と本書の視座
2 5 世紀における手工業生産の展開
(1)手工業生産遺跡の新たな型 ―複合工房群の成立―
(2)河内湖湾岸開発プロジェクト
(3)技術移植にみる地域格差 ―播磨地域を対象として―
(4)渡来系集団の動向と地域開発
3 古市・百舌鳥古墳群の展開と初期群集墳
(1)古墳の分析手法と本書の視点
(2)河内政権論の現在
(3)中央政権を支えた原初的官僚 ― 陪冢―
(4)5 世紀における“群集墳”の再検討
(5)開発型新興勢力の台頭 ―新興集落と初期群集墳―
(6 原初的官僚層の出現契機
4 小結 ―河内政権の権力基盤―
終章 日本古代国家形成論に関する理論的展望
1 東アジア情勢と倭人社会
(1)対外交流の2 つの型 ― 物資入手型と技術・知識導入型―
(2)激動の東アジア情勢と古墳時代中央政権の戦略
(3)ひらかれた倭人社会 ― 渡来系集団と倭人集団―
(4)韓半島系渡来系集団の歴史的役割
(5)技術・知識導入型交流の重点化とその背景
2 日本古代国家の形成と対外戦略
参考文献
分析対象遺跡文献
挿図表出典
初出論文
あとがき
事項索引
遺跡名索引
中久保辰夫(ナカクボ タツオ)
中久保辰夫
1983 年生まれ。
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。
2009 年度から2010 年度まで日本学術振興会特別研究員( DC2 )。
2011 年より大阪大学埋蔵文化財調査室助教。現在に至る。
博士(文学):大阪大学
主要業績
「古墳時代中期における韓式系軟質土器の受容過程」『考古学研究』第
56 巻第2 号 考古学研究会、2009 年
「渡来人がもたらした新技術」『古墳時代の考古学』7 内外の交流と
時代の潮流、同成社、2012 年
『野中古墳と「倭の五王」の時代』 高橋照彦・中久保辰夫編、大阪大
学出版会、2014 年
「古墳時代原初的官僚層形成に関するノート」『待兼山論叢』第48 号、
大阪大学大学院文学研究科、2014 年
受賞 2020年11月4日
「日本古代国家の形成過程と対外交流」(中久保辰夫著)
2019年度(第二回)渡来文化研究奨励賞を受賞しました。
受賞 2019年8月21日
『日本古代国家の形成過程と対外交流』
中久保辰夫(2017年3月刊行)が、第9回日本考古学協会賞・奨励賞を受賞しました(2019年5月18日発表)。
http://urx.red/YKw5
書評・紹介 2018年6月4日
『日本古代国家の形成過程と対外交流』
「日本考古学 第45号」(日本考古学協会)にて書評が掲載されました(評者:酒井清治先生)