近世ベトナムの政治と社会
上田新也 著
紙 版電子版
近世ベトナム国家機構と社会の知られざる全体像を、碑文や村落文書の活用により明らかにする。
出版年月 | 2019年03月31日 |
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ISBN | 978-4-87259-678-6 C3022 |
判型・頁数 | A5判・402ページ |
定価 | 本体5,900円(税込6,490円) |
在庫 | 在庫あり |
17~18世紀のベトナムは、北部は鄭氏、中部・南部は広南阮氏が政治的実権を掌握していた武人政権の時代である。本書では従来の官撰史料による研究では未解明となっていた近世ベトナム国家機構と社会の全体像を、碑文や村落文書の活用により明らかにし、フロンティア性の強い東南アジア的社会から閉鎖的・固定的メンバーシップを持つ強固な社会集団が分布する東アジア的社会へと変容していく近世ベトナムの姿を描き出す。
序章
第1節 検討対象とする政権、時代の呼称
第2節 先行研究および史料について
第3節 本書の視角
序章補 本書で扱う史料の書誌情報
第Ⅰ部 黎鄭政権の統治機構
第1章 17世紀黎鄭政権の国家機構―鄭王府系組織の構築―
はじめに
第1節 17世紀黎朝朝廷の空洞化
第2節 17世紀黎鄭政権の軍事機構
第3節 17世紀黎鄭政権の財政機構
第4節 非例官署の設置
第5節 鄭棡の即位とその治世
小結
第2章 鄭王府の財政機構―18世紀の六番を中心に―
はじめに
第1節 禄社制の再整理
第2節 六番の職掌と組織
第3節 三番・六番における宦官の任用
第4節 地方における財政機構
小結
第3章 黎鄭政権の官僚機構―18世紀の鄭王府と差遣―
はじめに
第1節 黎鄭政権における差遣概念
第2節 差遣元の黎朝系官職の検討
第3節 黎鄭政権における人事権の所在
第4節 差遣官僚の活動の実態
小結
第4章 黎鄭政権における徴税と村落
はじめに
第1節 徴税における村請け制の成立
第2節 禄社制と村落
第3節 受禄者・徴税官吏と村落
第4節 流散の発生と税制度
小結
第Ⅱ部 近世ベトナム社会の諸相
第5章 黎鄭政権の地方統治―17~18世紀鉢場社の事例―
はじめに
第1節 訴訟碑文を通じて見る黎鄭政権期の紅河デルタ社会
第2節 黎鄭政権期の鉢場社と東皐社
第3節 黎鄭政権の地方統治と鉢場阮氏
小結
第6章 紅河デルタにおける亭の成立と郷村秩序―龍珠社の事例―
はじめに
第1節 郷約よりみた山村の集落内組織
第2節 亭の成立
第3節 山村と近隣集落の紛争
第4節 張氏と在地社会
小結
第7章 近世ベトナムの家族形態―花板張功族の嘱書の分析から―
はじめに
第1節 花板張族の嘱書にみる相続
第2節 女性の土地所有と家族形態
第3節 共住集団と土地所有
小結
第8章 フエ近郊におけるキン族社会の成立―清福社の事例―
はじめに
第1節 清福集落史料群の概要
第2節 地籍関連文書より見る清福集落の変遷
第3節 清福集落における家譜編纂
小結
第9章 フエ近郊の郷村社会と親族集団の形成―清福社の事例―
はじめに
第1節 開耕氏族における支族・支派の形成
第2節 開耕氏族における祖先祭祀
第3節 開耕氏族における族資産の形成
小結
終章
第1節 黎鄭政権における政治と統治機構の構築
第2節 伝統村落の形成
第3節 ベトナムの近世
上田新也(ウエダ シンヤ)
1977年生まれ 早稲田大学法学部卒業。
その後、広島大学文学部に編入学し、同大学大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(文学)。
日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、現在は大阪大学文学部招聘研究員。