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古墳時代の葬制秩序と政治権力
上田直弥 著
紙 版電子版
古墳時代前半期の竪穴式石室や粘土槨などの埋葬施設を分析し、有力階層がどのような政治ネットワークを形成していたのかを復元。
出版年月 | 2022年09月30日 |
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ISBN | 978-4-87259-765-3 C3021 |
判型・頁数 | B5判・376ページ |
定価 | 本体7,200円(税込7,920円) |
在庫 | 在庫あり |
埋葬施設と儀礼の分析から複眼的な古墳時代像を復元
これまで古墳時代の政治史は、青銅鏡や鉄製甲冑などの副葬品をもとに研究されてきた。本書では古墳時代前半期の全国の竪穴式石室や粘土槨と呼ばれる埋葬施設に焦点を当て、その構造から共通性・地域性を抽出し、当時の有力階層がどのような政治ネットワークを形成していたのかを復元する。また、古墳時代の開始期から横穴式石室の出現期までの埋葬儀礼の変遷を考察することで、日本の古墳の成立、盛行そして消滅していくさまを浮き彫りにする。
国内史のみならず世界史のなかで、古墳時代がもつ歴史的意義を考察するための重要な基礎作業の成果。広範囲かつ長期間を対象とし、悉皆的な資料収集と精緻な分析を行った意義も大きい。
序章 本書の目的と課題
第1節 国家形成期における葬制研究の意義
第2節 古墳時代葬送儀礼と埋葬施設構造
第3節 本書の構成と内容
第4節 用語と編年の問題
第1章 古墳時代竪穴系埋葬施設研究の現状
第1節 竪穴式石室の研究史
第2節 竪穴系埋葬施設研究の諸問題
第3節 「棺槨論争」の推移とその今日的意義
第4節 「槨」「室」名称問題が提起する課題
第2章 立面形態から見た畿内竪穴式石室の地域性
第1節 研究略史とその課題
第2節 横断面形態から見た竪穴式石室の地域性
第3節 石棺の成立と竪穴式石室
第4節 竪穴式石室の地域性とその意義
第3章 前期首長墓の系列展開と埋葬施設構造の変遷
第1節 研究史と分析視座
第2節 竪穴系埋葬施設基底部分類試案
第3節 畿内小地域ごとの石室基底部構造変遷
第4節 粘土槨の構造と竪穴式石室
第5節 竪穴系埋葬施設構造の地域性とその意義
第4章 摂津前期古墳の葺石と内部構造
第1節 古墳葺石の基礎的検討
第2節 摂津前期古墳における葺石
第3節 古墳の葺石と内部構造
第5章 竪穴式石室の広域普及と地域性
第1節 竪穴式石室構築規範の全国的傾向
第2節 山陰地域における竪穴式石室の構造
第3節 山陽地域における竪穴式石室の構造
第4節 竪穴式石室構築規範の多様性
第6章 畿内における粘土槨の展開過程とその画期
第1節 研究史とその課題
第2節 畿内における粘土槨構造
第3節 粘土槨の展開過程
第4節 粘土槨成立の歴史的意義
第7章 粘土槨の広域展開とその背景
第1節 関東における前期古墳研究
第2節 粘土槨の基礎的検討
第3節 関東地域における粘土槨の構造
第4節 埋葬施設と他要素の関係
第5節 粘土槨広域展開の歴史的意義
第8章 竪穴系埋葬施設から見たヤマト政権の対地域戦略
第1節 東海における前期古墳埋葬施設
第2節 東海-関東境界域における埋葬施設構造
第3節 竪穴式石室東限域における地域性
第4節 埋葬施設構造とヤマト政権の地域戦略
第9章 「棺制」の変遷と葬制の変革
第1節 猪名川流域における棺と外郭施設
第2節 近畿有力中期古墳における棺と外郭施設
第3節 初期群集墳における棺と外郭施設
第4節 「棺制」変遷の画期とその意義
第10章 古墳時代の葬制秩序と政治権力
第1節 埋葬儀礼の通時的変遷
第2節 埋葬儀礼の空間的展開
第3節 埋葬儀礼と葬制イデオロギー戦略の展開
終章 総括と展望
第1節 竪穴系埋葬施設の展開過程
第2節 古墳時代葬制研究の展望
おわりに/引用・参考文献/棺槨論争主要関係論文一覧/図表出典一覧/あとがき/索引
上田直弥(ウエダ ナオヤ)
2018年 大阪大学文学研究科博士後期課程修了 博士(文学)。
現在 大阪大学埋蔵文化財調査室助教。
主要著作
「粘土槨の展開過程とその画期―畿内の事例を中心に―」『考古学研究』第62巻第3号、2015年
「前期首長墓の系列展開と埋葬施設構造の変遷」『古代学研究』第223号、2019年
「石釧型式の変遷と生産の画期」『待兼山考古学論集Ⅲ』大阪大学考古学研究室、2018年
書評・紹介 2023年4月10日
『古墳時代の葬制秩序と政治権力』が書評掲載されました
本書が『考古学研究』4月号にて書評掲載されました。評者は北山峰生先生です。