全ての書籍 書籍検索/人文科学/語学/社会 日米社会と「多層的」少数者のディスコース分析
紙 版電子版
日米社会に生きる性的/民族的少数者のナラティブに表れるディスコースの交錯と、アイデンティティの構築を考察。
出版年月 | 2023年12月08日 |
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ISBN | 978-4-87259-781-3 C3080 |
判型・頁数 | A5判・206ページ |
定価 | 本体4,100円(税込4,510円) |
在庫 | 在庫あり |
日系人強制収容経験やクィアネスは、集合的アイデンティティの象徴として、どのようにマイノリティのナラティブに取り入れられるのか――
日本や米国社会に生きる性的/民族的少数者の語りに多様なディスコースの交錯を見出し、アイデンティティがいかに構築されているかをインタビューの質的分析を通して明らかにする。具体的には、性的少数者の会話の中に見られる、カミングアウトをめぐる困難や異性愛規範(ヘテロノーマティヴィティ)を切り抜けるストラテジーについて語ることで同意、共感が構築されるナラティブや、ヘテロノーマティヴィティの不可視化・後景化によって内在的ヒエラルキーが強調されるナラティブなどについて分析を行った。また、多層的少数者の語りにおいて、集合的アイデンティティの象徴としての日系人強制収容経験、Japanese-nessや政治性を帯びたクィアネス等が、どのように人々のナラティブに取り入れられ、時には連帯、時には他者化の動力となるのかについても丁寧に考察する。
第1章 序論
1.1 はじめに
1.2 本書の構成
第2章 先行研究とその課題:性的/民族的少数者をめぐるディスコース研究
2.1 性的少数者をめぐる研究とディスコース
2.2 日系アメリカ人をめぐる研究とディスコース
2.2.1 日系アメリカ人:その歴史とアイデンティティの変遷
2.2.2 日本人長期滞在者:世代差やその他の要因による差
2.2.3 日系・日本人とその他エスニックグループとの関係
2.3 アイデンティティの「複合」:性的/民族的少数者をめぐるディスコースの交錯
第3章 本書の課題と目的:アイデンティティの多層性
3.1 先行研究における問題点:多層的な「個」としての少数者
3.2 本研究の課題と目的:アイデンティティの個別性と集合性
第4章 本研究における分析の枠組み
4.1 分析手法・理論的枠組み
4.1.1 ディスコース分析(談話分析)
4.1.2 ナラティブ(語り)とアイデンティティ
4.1.3 shared meaningとスキーマ
4.1.4 他者と他者化(アザーリング)
4.2 リサーチ・クエスチョン
4.3 研究の方法と対象者
第5章 データ分析① 日本での調査
5.1 セクシュアリティをめぐる多数者と少数者の対立
5.2 性的少数者間の対立・軋轢・排除:コミュニティ内の他者化、不可視化
5.3 性的少数者間の対立・軋轢・排除:エスニシティと文化の差異
5.4 分析と考察:語りから見えた、性的少数者が経験する問題
5.5 本章のまとめ
第6章 データ分析② 米国での調査
6.1 日系・日本人間の差異① 強制収容所をめぐる「自己」と「他者」
6.2 日系・日本人間の差異② 誰が“Japanese”なのか
6.3 性的/民族的アイデンティティの交錯:“queer”とエスニシティ
6.4 分析と考察:集合的アイデンティティとしての「日系・日本人」及び「クィア」
6.5 本章のまとめ
第7章 語りの総括:日米少数者の語りから見えたもの
7.1 日本の性的少数者による語りから:個人的マイノリティ性
7.2 米国の日系・日本人と/である性的少数者の語りから:集合的マイノリティ性
第8章 リサーチ・クエスチョンへの解:「生きのびる」ストラテジー
第9章 結語
付録
トランスクリプト記号
参照文献
木場安莉沙(コバ アリサ)
2020年大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程修了(言語文化博士)。
2023年現在名古屋文理大学フードビジネス学科助教。
(主論文)「メディアに見る性的少数者の表象―再名づけの実践とイデオロギーの戦略―」『年報カルチュラル・スタディーズ』第7号(カルチュラル・スタディーズ学会、2019年)、“Discourse of Native-speakerism in Japan” PanSIG Journal 2019(The Japan Association for Language Teaching、2020年)、 “Discursive othering of Asian Americans: A preliminary reflection of a foreshadowing COVID-19’ related hate” Language, Discourse & Society 9(17)(International Sociological Association、2021年)。