紙 版
九鬼周造の哲学を人間学的に再解釈する。大日本帝国の軌跡と重なる九鬼の半生をたどり、破綻と再建の視点から捉え直す。
出版年月 | 2025年02月15日 |
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ISBN | 978-4-87259-830-8 C3010 |
判型・頁数 | A5判・292ページ |
定価 | 本体5,600円(税込6,160円) |
在庫 | 未刊・予約受付中(近刊) |
九鬼周造の哲学を近代の人間学と読み解き、その軌跡を破綻と再建という視点から論じる。
近代日本の発展と歩調を合わせて成長した九鬼は人生の躓きによって近代人の抱える孤独に直面し、そこから脱出する方法を探求するようになる。偶然存在する孤独な実存が想像力によって共同体に開かれて他者と出会い、人間となる。しかし人間となった実存はしばしば自身の偶然性を忘れ、自分たちこそが最も優れた人間であると思い上がる。そして他者を見下して自分の思想に従わせようとするようになる。
こうした彼の哲学の歩みは大日本帝国がアジアの盟主としての野望をもって太平洋戦争に突入し、崩壊するまでの軌跡と重なりあう。
近代日本の申し子、九鬼周造の哲学の再解釈。
はじめに 近代に人間であること
第一部 九鬼周造の人間学:破綻と再建
序論 九鬼周造小伝
第一章 トリロギーとデュアリズム― 九鬼周造の人間学の破綻
第二章 「現実」を求めて:『偶然性の問題』の論理学
第三章 世界を創る:『偶然性の問題』の行為論
第四章 永遠回帰する宇宙:詩の美と実存
第五章 トリロギーとナショナリズム:九鬼周造の人間学の再建
第一部 結論 現代の人間科学へ
第二部 存在と非存在を寿ぐ
第六章 平⾏線と脱⾛:九鬼周造と中井正一の隔たりについての思想
第七章 なぜ「絶対無は絶対有にほかならぬ」のか:九鬼周造と田辺元
第八章 本当の愛に背を向けても:哲学者・九鬼周造の誕生
織田和明(オダカズアキ)
1992年大阪府生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(人間科学)。
現在は大阪大学大学院情報科学研究科特任助教。専門は日本哲学。
論文に「田辺元の倒し方―絶対転換としての絶対無の空虚さをめぐって」(廖欽彬・河合一樹編『危機の時代と田辺哲学―田辺元没後60周年記念論集―』法政大学出版局、2022年)、“Kuki Shūzō and the Question of Origins” European Journal of Japanese Philosophy, Vol. 5, Chisokudō Publications, 2021.など。